人材紹介事業を新たに立ち上げる人に共通した悩みについて、今回は人材紹介未経験者編として取り上げたい。人材紹介事業の実務経験がない人の場合と、実務経験がある現役のコンサルタントが事業を立ち上げた場合にわけて説明する必要があり、今回はその前編として、人材紹介未経験者に共通した悩みを取り上げる。
人材紹介実務経験がない人に多い創業時の状況で一番顕著なのは、事業計画の詳細が詰まっていないことである。新規事業として人材紹介事業を立ち上げる理由が固まっていることと、事業計画が具体化していることには大きな隔たりがあるので注意したい。
人材紹介事業を立ち上げた理由とは、会社の新たな収入源として人材紹介サービスに期待していること、人材不足が深刻な介護・福祉業界向けのサービスをしたいこと、本業で介護・福祉施設を運営していいるため、そこの人材不足の解消にも貢献することにも期待を寄せていることなど、これらはすべて人材紹介事業の立ち上げを選んだ理由である。
事業計画とは、売上計画や人員計画、経費予測だけではなく、実際に潜在的な顧客リストの作成をすることであり、具体的な求人案件の調査をすることで、正確にどの程度の需要を見込めるか、その概要を数字でつかむことである。つまり、職種やポスト、その年収レベルをつかむことで、実際に具体的な売り上げ計画の数字をはじくことができる。そして最も大切なことは、人材紹介会社として、どのような看板を掲げるか、それはすでに先発の競合他社の分析に基づいて、同自社のサービスを特徴づけ、差別化するか、そしてそれを自社ホームページなどで、明確にわかりやすく説明することである。どんなに立派な企業理念を作っても、顧客の求めるサービスを提供できる根拠を示す必要があり、顧客のニーズを正確にとらえ、優秀な人材を紹介するというのは、言うは易し、行うは難しであることは言うまでもない。また、人材紹介事業の実務経験者がいない場合、実際に仕事を覚えるところから始めなければならないため、
以上の通り、人材紹介事業を始めるには、しっかりとした事業構想を固めておくことが必要である。実際、有料職業紹介事業の許認可を取得した事業者の多くは、精度の高い事業構想をまとめる以前に許認可を取得し、その後、なかなか事業が立ち上がらないというジレンマに直面している。これはなぜかというと、全段落で書いた事業環境の分析は、人材紹介事業の未経験者には容易なことではないからである。それがゆえに、創業時から6カ月程度は、人材紹介事業に詳しい人物が中心になって、事業構想を早々にまとめることが必要であり、できれば許認可の申請をした後、認可されるまでの2か月の間に全ての準備を終えて、許認可が下りたその日から、営業を開始してほしい。
実際、これまでに人材紹介事業を経験してきた人の場合、すでに目星をつけている顧客を持っていること、またそれまでに取り組んできた職種やポストがあるため、新たに事業を立ち上げた際も、過去の事業領域を継続する人が多い。しかし、事業経験者であっても、新たな悩みが発生する。次回は、経験者に共通した創業時の悩みについて紹介する。
人材紹介事業を創業時には、実務経験者が中心になって事業計画を固めることが大切であるが、もし会社にそのような人物がいない場合は、一定期間(最低3か月から6カ月くらい)、人材紹介の実務経験者が事業の立ち上げ支援をしてくれるサービスを利用してみるのも一案である。
職業紹介責任者講習の実施機関の一つである一般社団法人国際キャリア支援機構には、小規模の人材紹介事業者の創業時支援をサポートするサービスがあるため、利用を検討してみてもいいだろう。