人材コンサルタントにとって、最大の不幸は2つあります。それは「内定辞退にあうこと」と「保証期間内に退職されること」です。今回は前者について書いてみたいと思います。
なぜ内定辞退が最大の不幸なのか、このことに説明はいらないと思いますが、その理由は主に3つあります。
1)過去数か月取り組んだ仕事が実を結ばないから。(成功報酬で売上ゼロ)
2)内定辞退により、求人企業からの信頼を失う可能性があるから
3)内定辞退により、求職者本人との信頼を失う可能性があるから
1)は言うまでもなくとても辛い出来事ですが、実は長期的に見た場合、2)と3)が大きな損失になりかねないため、内定辞退が起きた直後の適切な対応にはとくに注意が必要です。
内定辞退の事実を求職企業に伝える時は、とても気が重くなるものです。採用担当者の落胆ぶりは人材コンサルタント以上であり、中には怒り出す人もいます。「なぜ人材コンサルタントはこの事態を避けることができなかったのか」、そのように責められることもあります。まさに顧客との関係にひびが入りかねない大事件です。
内定辞退をした求職者本人ですが、こちらはいろいろな人がいます。内定辞退を申し訳ないと思ってくれる人もいますが、そうではない人も少なくありません。求職者との信頼関係をどう築くかというのは人材コンサルタントにとって大切なテーマです。しかし、理解しておかなければならないのは、いい関係を築けたと思っていても、求職者は自分の利益を確保するためには内定辞退をせざるを得ない場合もあるということです。つまり、大切な事実は「内定辞退は起きる」ということなのです。
人材紹介事業にとって事業経営の大きなリスクともなりかねない内定辞退について、それを予防するための対策はないのでしょうか。
それには4つの対策のポイントがあります。
1)求職者の転職に対する真の望みを深く理解しておくこと
2)求職者とのコミュニケーションの回数を増やしておくこと
3)求職者のキャリア相談には親身に、より深く関わり続けること
4)求職者のほかの転職活動の状況をできるだけ把握しておくこと
これら4つの対策の精度を高めておくこと、これがまずは予防策として有効です。そのうえで、次の3つのことを人材コンサルタントは考えておく必要があります。
1)求職者にとって第1希望の転職先かどうか
2)どの程度の待遇であれば、求職者は納得するか
3)何か懸念されるサインを求職者が出していないか
人材コンサルタントとしては、求職者のサイドに立ちながら転職支援をしつつ、一方で求人企業が内定辞退で最終候補を失うことがないように、求職者の状況をしっかりとフォローすることが大切です。
新卒の就活ではないので、何個も内定を獲得することを自慢するような人を中途採用でお見かけすることはマレなことです。しかし「内定辞退はある」ということ、人材コンサルタントは肝に銘じながら、しっかりと各方面にサポートをしていくことが大切です。コミュニケーションをたくさんとることで状況がよりよく見えてきますから、たくさん手間をかけて、しっかりと求職者の転職サポートをしていくことが、内定辞退にあいにくい人材コンサルタントになる近道になります。
人材コンサルタントにとって、もう一つの大きな不幸である「保証期間内の退職」を予防するための方法については、次回書きたいと思います。