人材紹介ビジネスの基本

ジュニア人材の採用はやりやすいか

ジュニア人材とは、35歳以下の若手人材を意味する場合、そして管理職や専門職ではない担当業務や補助業務に従事するスタッフを指す場合がある。シニア人材が管理職やベテラン世代を意味して使用することと対極にある言葉である。

ここに重要な問いがある。「ジュニア人材の採用はやりやすいか否か」

この問いに対する私の意見は、「ジュニア人材の採用は難しいことがある」となる。個人的には、ジュニア人材よりミドル人材やシニア人材の採用の方がやりやすいと考えていたため、採用実績にジュニア人材が占める割合は1割にも満たない。

一般的にはどうだろうか。人材紹介の経験がない人、経験が浅い人の中には、人材紹介の仕事をに初めて取り組む際、ジュニア人材の求人から始めようと考える人がむしろ多いかもしれない。実際、私がそう考える根拠は、このような考え方を持つ人に多く遭遇してきたからである。

主な理由は3つある。一つは、求人が求める応募条件がそれほど厳しくないことである。つまり、採用するためのハードルの低さが、人材の候補者選考が楽になり、選考期間の短縮につながることが多い。ジュに人材の面接官は、各部署の部長、もしくは課長で済む場合があり、部課長の面接日程の調整は比較的スムーズに行われることが多い。もしシニア人材の採用となれば、社長以下、複数の役員が面接官となることがあるため、面接日程の難易度が増し、選考期間が長期化することも多い。

二つ目は、ジュニア人材の方が転職希望者が多いからである。まだキャリアの方向性が定まらない若手は、世の中に求人案件が多い35歳くらいまでの間に転職をすることが多いからだ。つまり、転職希望者が多ければ、それだけ適任な候補者を探しやすい。もちろん、複数の求人を掛け持ちする人が増えたり、複数の内定獲得者の場合、入社する以外の会社には内定辞退することになる。このため、人材の確保は、入社の瞬間まで安心できない。

3つ目は、求人企業が採用を急いでいることが多いことである。これも採用期間の短縮化につながる。もともと採用基準がシニア人材より格段に低いため、採用の緊急性次第では、応募条件を妥協することもある。シニア人材と比べれば、ジュニア人材が会社の業務に与えるインパクトは低いことから、採用の進捗次第では面接官の妥協が起きるのかもしれない。

上記の3つを総合的に考えた結果、ジュニア人材にフォーカスするのがビジネス判断として合理的であると考える人は多い。特に、まだ人材紹介の実績が少ない時の判断としては理解できる面も多い。

シニア人材の採用は、世の中に求人数が比較的少ないこと、転職希望者の数も減ること、求人の募集要件が厳しいこと(特定分野で経験や実績を積んでいることが、よりシビアに求められがちである)、選考プロセスが長くなりがちであること、シニア人材はキャリアのこと以外にも検討事項が増える傾向があるため、確かに面倒に見えるのかもしれない。

「ジュニア人材の採用は難しいことがある」というのが私の結論であると最初に述べた。なぜはっきりと「ジュニア人材の採用はやりやすい」と言い切れないかと言えば、それは候補者集めの容易さや募集要件のハードルの低さ、選考期間の短さという人材紹介会社にとってのメリットがあったとしても、一方で内定辞退の多さやキャリアの方向性が定まっていないことなどが、人材紹介のコンサルタントにとって、豊かな業務経験をもってしても「ビジネスの先読み」を難しくさせるからである。

ビジネスは先読みができるようになると事業が安定してくる。人材紹介は自転車操業で苦しいという意見もある。事業を安定化させるためにどのような独自戦略を立てるべきか、そこにひと工夫が必要である。